新電力大手イーレックス <9517> [終値702円]2024年3月期に上場後で初の赤字に陥る。
電力の卸市場価格の変動に振り回され、販売価格が仕入れ価格を下回る逆ざやになる。
大手電力との価格差で稼ぐ事業モデルは限界を迎え、業界では淘汰が進むが、
光明がないわけではない。
「バイオマス」という強みを生かした事業構造の転換だ。
再成長を目指すには、他社に無い強みをいかした事業構造にする必要がある。
筆頭がバイオマス発電だ。
電源が少ない新電力の弱点を克服すべく国内で同発電所の建設・運営を手掛けており、
これを海外に広げる。
バイオマスは太陽光や風力のように自然条件に左右されず、夜間などでも安定した発電量を出せる。
東南アジアでは経済成長に加え、一定の供給力確保と脱炭素対応を進められ、需要が多い。
農業や林業の副産物で燃料となる木材が多く、立地面でも適している。
ベトナムでは初号機の建設に着手済みで、24年秋に稼働する。
30年までにベトナムで18基をつくり、現地の固定価格買い取り制度(FIT)で売電する。
1基あたりの出力は5万キロワット程度で、1基で年50億円ほどの売り上げが見込める。
同社の売上高の約9割は国内の電力小売り・卸売りだ。
バイオマス発電は約200億円と全体の7%に過ぎない。
仮にベトナムの分がフル稼働すれば900億円の増収要因で、成長のけん引役になる。
その上で資金調達が欠かせない。1基あたりの投資額は150億円ほどかかり、
ベトナム向けでは計2000億円以上になる。
昨年12月末の手元資金は約250億円にとどまる。
円滑な資金調達に向けては、苦戦する国内の収益構造のてこ入れも急ぐ必要がある。
ハードルは高いものの、バイオマスを筆頭とした戦略を踏まえれば、
イーレックスには再生シナリオを描き直す余力があるかもしれない。