扉を開いて（120円時代の日本経済）

2014年9月21日（日）晴れ

・120円時代の日本経済　構造転換で変わった円安効果。
　19日午前、東京外国為替市場では、ヘッジファンド同士が激しいつばぜり合い演じる。
　1ドル＝109円以上の円安になるとオプション取引に絡んで大幅な損失を迫られる円買い勢力。そして円の一段の下落を狙う円売り勢力。
　半年にわたる1ドル＝101〜102円台での膠着が終り、わずか1ヵ月で7円もの円安に振れた為替相場。

　円安の切っ掛けは17日の米連邦公開市場委員会（FOMC）。市場はFOMCメンバーの政策金利見通し示す「ドット・チャート」に注目。
　2015年末のフェデラルファンド（FF）金利は平均1.27%と6月時点の1.20%から上がり、市場は利上げペースの加速があり得ると読み取った。

　貿易赤字が定着、物価はプラスに転じ、米金利上昇で日米金利差は拡大に向かう。需給、物価、金利差、円安要因顔そろう。
　ヘッジファンドなどは1ドル=115円でのオプション取引の残高積み上げつつある。来年120円との声も市場では出る。

　株式市場13年11月にも短期間に6〜7円の円安進み、当時の日経平均株価は2000円上昇。
　今回円安への振れ幅は同程度なのに、日経平均は1ヵ月前比1000円ほどの上昇にとどまる。円相場と株式相場に乖離生じ始める。
　背景には円と日本経済、日本株の関係が転換期迎えていること。生産拠点の海外シフトが進み、経済全体に占める製造業の比重が後退。
　国内総生産のうち製造業の比率は約18%と1990年代末から約4ポイント低下。サービス業が2割に達し、円安の恩恵直接受けにくい産業が台頭。
　デフレ終息、インフレに向かう中、円安は輸入物価上昇通じ家計に重くのしかかる。

・120円時台の日本経済　「円安歓迎」とはいかぬ理由。進む経済のサービス化。

　GDP・雇用で高まる存在感：自動車など輸出企業は07年末〜12年にかけての円高局面で生産拠点の海外移転加速。
　国内総生産（GDP）に占める製造業の存在はここへきて一段と小さくなっている。GDPは海外生産は直接には寄与しない。
　GDPに占める製造業の割合は12年時点で18%と、07年の20%から下落。一方サービス業は18%から20%に。リーマン・ショック挟み逆転。

　就業者の分布も変わる。就業者（非農林業）全体に占める製造業従事者割合、14年7月時点で17%と10年間で2ポイント下落。
　多くのメーカーが工場など海外に移転したのに加え、大規模なリストラ進めたため。

　製造業、もうけは海外で：円安は製造業の輸出を促し、国内生産・投資・雇用を回復させ、経済全体を底上げしてきた。
　製造業のウエートが下がるにつれ、こうした景気回復の経路が機能しにくくなっている。
　　
　現地で作って現地で売るのは究極の為替ヘッジ策。「リスク背負って膨大な（工場）投資している。為替が戻ったからと言って引っ込めず。」
　海外で稼いだお金を国内に還流して、有効に使うことが出来れば経済の活性化につながる。

　株式相場にはなお追い風：急速な円安を受けて日経平均株価は先週、372円（約2.3%）上げ。買いを主導したのは海外投資家。
　「トヨタ　<7203> ［終値6494円］村田製作所　<6981> ［終値11810円］日本電産　<6594> ［終値7124円］など
　本業が好調なうえ円安で一段とシェア拡大が期待できそうな銘柄には海外の中長期投資家の資金が入っている。」
　ヘッジファンドなど短期筋も出遅れていた輸出株中心に買いを入れ始めているという。
　
　GDPベースでは全体の2割弱にとどまる製造業だが、東証1部の時価総額ベースではなお5割前後占めている。
　株式相場にとって円安の追い風はなお大きい。野村証券試算、1円の円安は東証株価指数（TOPIX）採用銘柄の14年度の1株利益0.6%押し上げる。

　外需関連の大手企業の構成率が高い日経平均株価と、市場全体の値動き示すTOPIXの数位の違いが目立つ。
　この9月以降日経平均株価は約6%上昇、一方TOPIXは4%高にとどまる。NT倍率は足元で12倍強に達している。2010年ごろまで同倍率は10倍前後。

・120円時代の日本経済　膨らむ輸入、定着する貿易赤字。

　原材料だけでなく、通信機器や電子機器などの完成品まで様々なものを輸入するようになった日本。
　このまま輸出が伸びないと、円安が進むほど輸入コストがかさみ貿易赤字が増える。そして貿易赤字の拡大がさらなる円安を生むという構図。

　輸入価格の上昇に伴い、企業の交易条件も悪化。2005年までは交易利得も、それ以降損失が続く。
　この状態を解決するには「国内で作っているものでイノベーションを起こす必要がある」。

　このまま貿易赤字が膨らむと、サービスの貿易や所得収支（配当や利子の収支）も含めた経常収支も年間で赤字に転落にも。
　経常収支が赤字という事態になれば「国として外貨が足りない状況となり、それ自体が円安要因になる」。
　財政の脆弱さを標的にした「日本売り」の動きは出ていないが、
　今後一段の債務残高積み上がるなか、円安が日本経済にとって大きな試練を与える可能性がある。　

・120円時代の日本経済　輸入インフレ、家計を直撃。

　デフレ傾向にあった2005〜07年の円安局面と違い、日本経済はインフレに向かい始めている。
　消費者物価指数（DPI　生鮮食品除く総合）の上昇率は前年同月比3%台に達する。
　一方、所得は足元で伸びているが物価上昇分には届かず、実質所得は目減り。
　インフレで特にダメージ食らうのは年金生活者、高齢者世帯。日本の高齢者人口は増加傾向にある。

・急速な円安が進むなかで、輸出関連以外の新たな円安銘柄も市場で注目され始めている。
　7月中旬以降、さえなかった帝国ホテル　<9708> ［終値2320円］の株価がにわかに反転。先週16〜19日に株価は3.4%上昇。
　円安進展で、訪日外国人がさらに増加、稼働率の上昇につながるというシナリオ。
　日本政府観光局（JNTO）8月の訪日外国人客数、前年同月比22%増、110万9600人。
　円安による訪日外国人が日本でお金を落としやすくなっている。
　円安・株高など金融資本市場の活況が続けば、外資系金融機関の東京回帰も予想される。
　三菱地所　<8802> ［終値2386.0円］社長「金融は相変わらず丸の内地区に出たいという声が多い」と話す。

　新たな円安銘柄の候補　

　帝国ホテル　<9708> ［終値2320円］老舗高級ホテル。外国人宿泊も多い。

　共立メンテ　<9616> ［終値4470円］リゾートホテル、ビジネスホテルなど展開。

　富士急行　<9010> ［終値1247円］世界遺産の富士山周辺で鉄道・バス運営。

　ジャパン・ホテル・リート　<8985> ［終値61600円］全国30余りのホテル所有。　

　西武HD　<9024> ［終値2206円］プリンスホテル運営。

　寿スピリッツ　<2222> ［終値2205円］小樽でスイーツブランド「ルタオ」展開。

　三菱地所　<8802> ［終値2386.0円］大手町再開発

　三井不　<8801> ［終値3350.5円］帝国ホテル株33%保有。　

　野村HD　<8604> ［終値689.0円］外貨建て金融商品の販売。

　SBIホールディング　<8473> ［終値1285円］外貨建て金融商品の販売。

・120円時代の日本経済　
　日経ヴェリタス市場関係者アンケート「110〜115円」という回答目立つ。先行きについてはさらなる円安見込む声多い。
　

・日経平均株価先週末19日に、2012年11月からの「アベノミクス相場」での最高値。1万6321円と、約6年10ヵ月ぶりの水準。
　米連邦公開市場委員会（FOMC）やスコットランドの独立問題など重要イベントも波乱なく通過し、
　投資家がリスクをとりやすくなったのも株価押し上げ。
　日経平均株価は直近安値8/8（1万4778.37円）から1ヵ月半程度で1500円余り水準切り上げ、高値警戒感もくすぶる。

・株式市場で4-9月期配当（中間配当）や株式優待への関心高まる。中間配当は前年比1割増3兆1700億円と過去最高更新する見通し。
　優待実施企業も過去最多。配当や優待受け取るには、9/25までに買い注文約定させる必要。

　NSD　<9759> ［終値1743円］の株価は8月末比7%高と、日経平均株価の上昇率（6%）上回る。
　同社4-9月期末1株当たり45円の記念配当実施する計画。中間配当を株価で割った中間配当利回りは2.6%に。
　大型株でも三菱商事　<8058> ［終値2312.5円］や伊藤忠商事　<8001> ［終値1403.0円］など中間配当利回りの高い商社の上昇目立つ。

　中間配当再開する企業注目。NSD、丸和運輸　<9090> ［終値3970円］ウェッズ　<7551> ［終値1258円］が当てはまる。

　もっとも配当や優待に注目した投資は期間限定、
　SBI証券藤本誠之シニアマーケットアナリスト「権利落ち日には下落する可能性高いので注意が必要」と指摘。

・中国景気の先行きに注目が集まる。8月の工業生産が5年8ヵ月ぶりの低い水準に沈むなど景気回復への「黄信号」と取れる経済指標が相次ぐ。
　23日、英調査会社マークイットが9月のHSBC中国製造業購買担当者景気指数（PMI）発表予定。景況判断の分岐点である50台下回るかが焦点。
　中国経済の動向は不動産販売が左右すると言っても過言ではない。1-6月の名目国内総生産（GDP）のうち建築業と不動産業が1割強占めるため。
　
　足元の景気刺激策か、痛みを伴う構造改革か。中国政府はこれまでこの2つの間で揺れ続けてきた。
　昨年夏の景気減速受けて、李首相は構造改革より景気回復優先する姿勢示したが、一転今月の演説で構造改革重視する方向へ修正。
　「無理な景気刺激策は反動も大きいと中国当局が意識している証拠」と。「来年以降、6%前後の中成長の時代に入る可能性が高い」とも。

・米連邦準備理事会（FRB）16-17日の米連邦公開市場委員会（FOMC）で出口戦略の内容更新、金融引き締めに必要な備え進めた。
　半面、肝心の具体的な利上げ開始時期についてFEBイエレン議長は言質やヒント与えず。金融市場は来年の「Xデー」を見定める展開が続く。

・ソニー　<6758> ［終値1921.0円］正念場迎えている。
　17日スマートフォン（スマホ）事業不振に伴う損失発生で、2015年3月期連結業績下方修正と初の無配発表。
　翌18日終値前日比183円50銭（9%）安、1940円に急落。株価この1ヵ月半で約350円（約2割）値上りを1日で半分吹き飛ぶ。
　配当見送りは社内外にソニーの危機的状況を訴えたいとの狙いがある。
　「今期に構造改革をやり切る」（平井一夫社長）覚悟を強め、業績回復を確実にする考え。
　「構造改革は最終局面迎えつつある」（メリルリンチ日本証券片山栄一調査部長）と評価する声も。

　米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ（S&P）18日、ソニーの長期格付け格下げの方向で見直すと発表。
　格下げされると投資不適格級になる。

　中期的にはスマホやテレビ、カメラなどエレクトロニクス（エレキ）分野全体の抜本再編も注目される。
　エレキ分野で来期以降も期待できるのは、世界シェア1位の画像センサーと「プレイステーション4」が好調なゲーム。
　この2つの柱を軸に事業全体を再構築できるかがソニー再生のカギ。

・米アップル「iPhone（アイフォーン）6」「6プラス」販売で携帯電話3社が激しい顧客獲得競争繰り広げている。
　その中で正念場を迎えているのはNTTドコモ　<9437> ［終値1909.5円］。
　他社に先駆け新料金プランの導入や旧端末買い取りなど打ち出し、通信品質の向上に乗り出す。

　「ソフトバンク　<9984> ［終値8740円］やKDDI　<9433> ［終値6646円］からの顧客流入が期待でき、攻守逆転する」との声も。
　他社からの顧客流入が見込めるチャンスを前にしているドコモ。実質的な値上げともとられかねない施策で採算改善狙う。
　顧客数も利益も、と一挙両得狙いたいところだが、そのかじ取りは難しい。

・発掘実力企業：営業最高益企業（14）日油 <4403> ［終値681円］
　宇宙関連の他金属のさびを防ぐ処理剤など多角化奏功、15年3月期連結営業利益前期比微増の154億円になる見通し。3期連続最高益更新へ。
　17年3月期までの中期経営計画で重視しているのは「さび防止剤」「医療関連」「電子情報」の3分野。
　株価の反転には重点3分野の収益貢献を具体的に示す必要がある。
　
・会社がわかる　特集出光興産　<5019> ［終値2297円］海外に成長の活路求める戦略打ち出す。
　少子高齢化や車離れで国内の石油製品市場の縮小続く中、いち早く生産体制の効率化進めた。
　今後は海外の資源開発や石油製品販売に資金を重点的に投入。2014年3月期から3年間で3660億円の投資額の8割を海外に充てる方針。
　16年3月期連結営業利益（目標1500億円）のうち半分を海外で稼ぐ計画。
　株価は4/11に年初来安値（2007円）付けた後、戻り歩調。石油製品の販売マージンの改善受け、業績回復っへの期待が徐々に広がる。

・日本株が再び騰勢強めている。円安進行が直接の切っ掛けも、
　国際比較でみた日本株の出遅れ感などを材料に、外国人投資家が一足早く動き始めているのも見逃せない。
　BNPパリバ証券岡沢恭弥氏「海外のロングオンリーの投資家も
　富士重工　<7270> ［終値3371.0円］やホンダ　<7267> ［終値3756.0円］といった主力の自動車株に買いを入れ始めた」
　「ロングオンリー」とは一般的に年金基金などの長期投資家を指す。長期投資家は時価総額の大きな主力株好む。

　9月初めから一部のヘッジファンドや、相場トレンドに乗って利ザヤ狙うCTA（商品投資顧問）などの短期筋も動き出していた。
　これらの投資家は足元で、円売りと株価指数先物買いを同時に手掛けているとされる。ここにロングオンリーの海外長期マネー加わる。

　18、19日の2日間の個別銘柄の株価上昇率ランキングでは、電子部品や機械など輸出企業目立つ。
　市場参加者の厚みが増し、19日東証1部の売買代金は約2兆7500億円と、活況の目安とされる2兆円を大きく上回った。
　多少なら利益確定売りが出ても吸収しやすい環境になってきたと言え、株高持続へに期待が強まってきた。

・18〜19日株価上昇率ランキング　1位太陽誘電　<6976> ［終値1222円］上昇率9.3%　2位SUMCO　<3436> ［終値1254円］9.0%

　3位DMG森精機　<6141> ［終値1418円］8.7%　4位村田製作所　<6981> ［終値11810円］8.5%　5位オークマ　<6103> ［終値888円］8.4%

・日経平均株価見通し、市場参加者アンケート。年内の上値1万7000円超との見方が多く、2015年末に1万8000円から2万円目指すとの回答も。　

・ＯＵＴ　Ｌｏｏｋ:今週の株式相場、日経平均株価は1万6000円前後でもみ合いか。
　急速な株高が進み、株式市場では短期的な過熱感指摘する声も多く。
　一気に1ドル=109円まで進んだ円安・ドル高についても、目先足踏みする可能性があるとの見方も出ている。
　短期的な買われすぎ・売られすぎの目安となるRSI（相対力指数）、日経平均19日89%で「買われすぎ」のサインである70%以上に。
　東証1部騰落レシオ（25日移動平均）も19日119%と「買われすぎ」の節目である120%に近づく。

　最も株高基調は今後も続くとの見方は崩れていない。米景気の回復基調が確認されれば、日本株にもプラス。
　米国で今週発表される予定の新築住宅販売件数、耐久財受注額などの経済統計は材料視されそう。

・Ｗａｌｌ　Ｓｔｒｅｅｔ:今週の米株式相場は高値圏を維持する展開。米連邦公開市場委員会（FOMC）はほぼ無風。
　中国アリババ集団の大規模新規株式公開（IPO）やスコットランドの独立問題などの重要イベントも波乱なく通過。
　今週の注目指標は8月の耐久財受注。7月の耐久財受注は米ボーイングの大型受注受け22%強の増加で8月はその反動も。
　市場予想では17〜18%の減少。

・ランキング：増益予想なのに年初からの下落率が大きい銘柄ランキング

　1位イオンモール　<8905> ［終値2151円］騰落率▲26.71%　

　2位サンリオ　<8136> ［終値3370円］▲26.26%　3位ヒューリック　<3003> ［終値1160円］▲24.82%

　6位LIXIL　<5938> ［終値2333円］▲23.13%　需要落ち込み下方修正リスク

　16位カカクコム　<2371> ［終値1696円］▲14.69%　主力サイト、伸び鈍化の懸念。

　19位積水ハウス　<1928> ［終値1295.5円］▲12.94%　駆け込み需要の反動で戸建て受注減。

　21位ホンダ　<7267> ［終値3756.0円］▲12.24%　相次ぐリコール（無償で回収・修理）が上値抑える。

・世界市場往来：先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち17指数が上昇。

上昇1位アルゼンチン週間騰落率4.8%（13年末比騰落率114.8%）2位日本2.3%（0.2%）3位米国1.7%（4.2%）4位インドネシア1.6%（22.3%）
下位25位ロシア▲3.5%（▲18.9%）24位ベトナム▲3.0%（21.5%）23位オーストラリア▲1.7%（1.6%）22位カナダ▲1.7%（12.1%）

　2013年末比騰落利率　1位アルゼンチン114.8%　2位インド28.0%　3位フィリピン23.7%　4位インドネシア22.3%　5位タイ22.0%　
　最下位ロシア▲18.9%　24位ギリシャ▲1.2%　23位日本0.2%　22位英国1.3%　21位オーストラリア韓国1.6%　20位韓国2.1%　　

・脱デフレ、価格の波に克つ企業。
　独自の魅力や巧みな価格戦略で成長する企業。手作り、ゴージャス、安心感、接客力、「価格+アルファ」が成功のカギ。

　フジオフード　<2752> ［終値2686円］今期営業利益28億円（増益率34%）
　セルフ式大衆食堂「まいどおおきに食堂」をチェーン展開。最大の売りは手作り感。既存店売上高8月まで43ヵ月連続増加中。

　APカンパニー　<3175> ［終値2012円］13億円（29%）郷土料理強みにした居酒屋「塚田農場」展開。原動力はリピーター。　

　ブロンコビリー　<3091> ［終値3050円］19億円（30%）健康志向にも配慮したステーキ店に強み。

　オイシックス　<3182> ［終値2460円］7億円（1%）契約農家の野菜をネット通販。

　アスクル　<2678> ［終値2471円］65億円（52%）日用品通販サイト「ロハコ」など展開。

　セリア　<2782> ［終値4165円］103億円（1%）データ解析力生かし100円ショップ展開。

・テクニカル分析を学ぼう。値動きのパターンから「買い時」「売り時」を探る。

　まずチャートを見よう：ローソク足・移動平均重ね合わせて分析。

　ローソク足は株価の高値や安値の動きを視覚的にとらえやすいのが特徴。
　白は「陽線」と呼び、始値より終値が高い。黒は「陰線」で始値より終値がやすい水準に下がったっことを表す。
　ローソク足の隙間は「窓」と呼ぶ。窓があくほど強い値動き示した後は、隙間を埋めるように株価が反対方向に動くパターンが多い。

　移動平均線は過去何日、または何週間の終値の平均値を示す。ローソク足に2品の移動平均書き加えると株価のトレンドを把握しやすい。
　証券ジャパン野坂晃一調査情報部次長、6パターンに整理
　「底打ち」株価が13週移動平均超える「上昇トレンド予備軍」株価が26週移動平均超える「上昇トレンド」ゴールデンクロス
　「ピークアウト」株価が13週を割る「下降トレンド予備軍」株価が26週を割る「下降トレンド」デッドクロス。

　テクニカル分析で気をつけたいのは、ゴールデンクロスに入っても株価がすぐに下落する場合がある点。
　ゴールデンクロス入りで買い手が増えると見込んだ投資家は、事前に株を買っておき、ゴールデンクロスが出来ると売りに動くことがある。
　チャート上の「だまし」と言われ、特に日足の移動平均では起きやすい。
　インベストラスト福永博之代表取締役「サインが出てすぐ飛びつくのではなく、1日待ってトレンドを見極めるといい」と話す。

　株価チャートの形でも売買のヒントがある。株価の推移で高値がM字のように2つ並ぶ場合は、下落の前兆。

　相場の行き過ぎをとらえる：「振り子」の指標、レンジ相場で威力。

　現在の相場が「買われすぎ」か「売られすぎ」なのか、
　過度な値動きには揺り戻しが起こり株価は修正するとの前提で短期売買のタイミングを計るテクニカル指標もある。
　一定の範囲内で振り子（オシレーター）のように動くため、「オシレーター系」と呼ばれる。

　代表的指標はRSI（相対力指数）一般に過去14日間の値上がり幅の合計を同じ期間の値上がり幅と値下がり幅を合算した値で割り100倍する。
　RSIは70%超えると「買われすぎ」で先安観示す。30%以下は「売られすぎ」で相場反転する可能性高まる。
　「株価とRSIの動きが反対になっている逆行現象を活用すれば、短期的なトレンドの変化をつかめる」とも。

　「ストキャスティスク」現在の終値が過去一定期間の最高値と最安値のどちらに近い位置にあるか示す数値。
　3つの指標、このうち「パーセントD」は一般的に過去3日間の値動きをもとに相場の行き過ぎを判断。
　パーセントDが80%以上なら買われすぎで、20%以下は売られすぎ。

　「騰落レシオ」値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割る。
　一般に過去25日の平均で120%を超えると買われすぎを示し、80%を下回ると売られ過ぎのサインとみなす。

　足元の日経平均株価を分析。
　まずチャートで6つのサイクルに沿えば「上昇トレンド」に入っている。2本の移動平均線は7月第2週にゴールデンクロス形成。
　足元では2本の移動平均が上向きで上昇トレンド続くことを示している。
　
　騰落レシオに着目。12日には131%をつけ、買われすぎの水準。

　日経平均RSIやストキャスティクスのパーセントDも80%上回り、買われ過ぎの水準にある。
　2つとも短期での調整が近いと示すことを踏まえると、上昇トレンド継続とはいえ、当面は株価の下落に警戒した方が良さそう。（日経ヴェリタス）

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