
扉を開いて(世界利回り争奪戦)
- 2016年05月29日
- 株式投資・経済ニュース全般
2016年5月29日(日)はれ
・世界利回り争奪戦。低成長、運用難極まるマネー。
欧州で今月売り出された金融商品で、30億ユーロ(約3678億円)の発行額に104億ユーロ(1兆2750億円)の需要。
償還2066年、表面利率3.45%のスペイン50年国債。
欧州ではアイルランドやベルギーの100年債のほか、フランスなどが50年債発行、イタリアも準備中。
JPモルガン・アセット・マネジメントによると、
国債や公社債など世界の債券に占める利回りが5%以上の比率は00年には8割も、16年3月末時点で約6%に。
英フィッチ・レーティングス、世界で利回りがマイナスの国債は4/25時点で10兆ドル近く。
マイナス金利から逃避するマネーが演じるのは「金利争奪戦」。
・世界利回り争奪戦。社債で下げ顕著。
今や世界のマイナス金利国債の3分の2を占める日本の投資家はその中心にいる。
資金流入が続く米国の投資適格社債の利回りは、15年末の約3.7%から、足元では3.1%まで低下。
日本でも27日に条件決定したトヨタ <7203> [終値5589円]の10年債と20年債の利回り、
それぞれ0.09%、0.343%と民間企業で過去最低になり、社債の金利低下が顕著。
運用難に直面すれば投資家は少しづつ、許容するリスクの拡大迫られる。
米国では信用力が低い企業が発行するハイ・イールド債でも
「一段と格付けの低いB格やCCC格へ資金が向かう」との見方も浮上。
・世界利回り争奪戦。副作用が表面化。
マネーの集中は副作用も生む。農林中央金庫は16年3月期、外貨の調達コストが1899億円と前の期比6割増。
13年ごろの金融市場では世界景気が回復し、安全資産の債券がら株式に資金がシフトする
「グレートローテーション」がはやされた。
だが主要7カ国(G7)の首脳会議(伊勢志摩サミット)の首脳宣言が
世界経済の下方リスクの高まりを指摘したように、成長の力は弱い。
市場は低成長が長期化する「長期停滞」を意識し、リスクが高い株式に資金は向かいにくい。
・世界利回り争奪戦。薄利でもリスク傾斜。
世界的に潜在成長率が低下し、金融市場ではかつてないほどの低金利が常態化。
利回り確保するにはある程度のリスクは避けられず、投資家たちはわずかな果実を巡って激しく争う。
日本生命保険、2年前から他社に先駆け海外社債投資を自前で始め、海外企業や自治体とのやり取りが常態化。
日生の運用資産60兆円のうち社債は6兆円弱で、うち海外が6割弱に膨らむ。
15年度は社債投資8000億円のうち3分の2を海外に向けた。
明治安田生命保険も海外社債投資のチームつくりに着手。米国投資適格社債などに長期投資し、金利収入狙う。
利回りが消えていく中でマネーは新しいリスクを取らざるを得ない。
マイナス金利の期間が長いデンマークでは、大手年金のサムペンションが不動産投資を急拡大してきた。
資産全体の10%を住宅に、4%を森林や天然資源など流動性の低い資産に投じている。
いつでも売買できる利便性より利回り追う。
国内でもゆうちょ銀 <7182> [終値1312円]2月に不動産投資部設けた。
・世界利回り争奪戦。リーマン危機の「発火点」復活。
証券化商品の発行増、リスク管理は厳格化。
大和証券 <8601> [終値634.8円]試算、2015年度国内発行額は4兆7685億円と前年度から18%増。
商品化商品と言えば「リーマン・ショックの引き金引いた金融商品」という悪名が付きまとう。
商品化商品は多様。国債の代替投資として選ばれているのが、住宅金融支援機構の住宅ローン担保証券(RMBS)。
さらに一歩進んだ商品が、消費者金融ローンや携帯電話端末の割賦債権等担保にする資産担保証券(ABS)。
金融危機を起こすような爆弾にはならないかもしれないが、
米利上げや市場の混乱引き金に損失被るリスクは残る。
・世界利回り争奪戦。債券補う株、成長の期待薄く。高配当・価格安定銘柄が受け皿。
債券市場でマイナス金利圏が広がり、年金や生保、個人などあらゆる投資家が利回りの確保に苦悩。
一方、債券での収益低下補うはずの株式は
「低成長の中で金融政策に支えられる構図が続き、下値リスクくすぶる」のが実情。
その結果、高配当で安定した銘柄などに資金集中する構図強まっている。
フリーキャッシュフローが黒字で配当高利回りの銘柄。
ゆうちょ銀 <7182> [終値1312円]配当利回り3.81% PER16.3倍
コマツ <6301> [終値1859.0円]3.11% 19.0倍 椿本チエイン <6371> [終値781円]2.78% 11.0倍
ユニシス <8056> [終値1304円]2.68% 13.9倍 キューリン <4569> [終値2187円]2.65% 15.0倍
OSG <6136> [終値1987円]2.51% 12.8倍 NTT <9432> [終値4815円]2.49% 13.4倍
・世界利回り争奪戦。個人マネー、米REIT変調注意。為替ヘッジ付き投信も選択肢。
「ポートフォリオ全体で2ケタの期待リターン求めるにはどう転がっても難しい時代になった」との声。
個人投資家に人気の米REITは価格変動リスクが大きい。
・原油相場が上昇。米国指標WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は26日に一時、
7カ月半ぶりに1バレル50ドル台に乗せた。
原油高は市場心理改善させ、株価や他の商品価格の上昇をもたらした。
ただ、原油相場の先行きには慎重な見方も根強い。
原油相場は2月に記録した12年9カ月ぶりの安値(26ドル強)から9割高い水準。
原油高は資源国の通貨高にも波及、ノルウェークローネ、カナダドルなどが対ドルで上昇した。
商品市況全体の動きを占めるロイター・コアコモディティーCRB指数も年初来高値圏。
資源国への不安を後退させそう。ただ、原油相場は50ドル到達後、投機筋の利益確定売りに押される展開。
市場では「原油の現物は余っている。先物相場の上昇は行き過ぎの面もある」との警戒感も。
・6月と7月、どちらの米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ決めるか。
米連邦準備理事会(FRB)は今夏の利上げに向けた地ならしを本格化させている。
6/26の英国の欧州連合(EU)離脱巡る国民投票も気になるところだが、カギを握るのは6/3発表の5月の雇用統計。
失業率が改善するなど雇用統計が堅調なら6/14〜15日のFOMCで利上げする可能性がある。
FRBイエレン議長は5/27、ケンブリッジハーバード大討論会に参加。
講演で「米経済は改善しており、数か月内に利上げするのが適切」と発言。
イエレン議長は6/6にも講演予定。市場に対して明確なシグナルを出す機会となる。
・石油輸出機構(OPEC)は6/2、ウィーン本部で半年に一度の総会開く。
増産続けるイランと、政治的に対立するサウジアラビアとの確執が一段と深まっており、
原油相場の需給改善に向けた合意に至るのは困難との見方が強まっている。
シェア争いの再燃で需給悪化を招くリスクくすぶり続ける。
原油価格が反落すれば商品相場全体の下げを誘発しやすく、
リスクオフムードが高まって株式市場も巻き込む形で世界的な金融市場の混乱を引き起こしかねない。
・巨額債務抱えるギリシャの危機が今夏も再発する心配はなくなった。
24〜25日のユーロ圏財務相会合がギリシャへ
103億ユーロ(1兆2600億円)の追加融資枠認めることで合意したため。
債務不履行(デフォルト)と国際通貨基金(IMF)の支援離脱というギリシャ巡る目先の2大リスクを何とか回避。
・自動車部品メーカー再編が本格化。
日産自 <7201> [終値1064.5円]系列最大手カルソニックカンセイ <7248> [終値836円]株売却の検討。
トヨタ <7203> [終値5589円]マフラー大手、フタバ産業 <7241> [終値537円]の増資引き受け。
タカタ <7312> [終値421円]巡っては
米投資ファンド、コールバック・クラビス・ロバーツ(KKR)が支援に名乗り。
・発掘実力企業:ニッチで稼ぐ(16)ピーエス三菱 <1871> [終値398円]
国内の土木用プレストレスト・コンクリート(PC)でトップシェア握る。
「プレストレスト」とは日本語で「あらかじめ圧力をかけた」と訳される。
PCではコンクリートにピアノ線などの緊張材と呼ばれる素材埋め込み、引っ張る力が働いた際に強い抵抗力持つ。
「最強のコンクリート」。土木以外にも用途広がる。
一般のコンクリートより耐久性が強い分、柱などの支え少なくて済む。
ホールや物流施設などの建築用に使われる。
2016年3月期連結純利益18億円と1996年3月期に記録した最高益に迫った。
半面、17年3月期は土木部門の減収など背景に約2割の減益見通し。
新たな事業基盤を築くことができるかが、今後の収益拡大のカギになりそうだ。
・ソニー <6758> [終値3078.0円]稼ぐ力が回復。
24日発表、2017年3月期の連結業績予想は営業利益で前期比2%増、3000億円見込む。
熊本地震の影響で1150億円の損失が出るにもかかわらず、
全体では増益確保できるのはエレクトロニクス事業の復活が大きい。
「来期営業利益5000億円を達成する革新が一段と強まった」。モルガン・スタンレーMUFG証券アナリスト。
けん引はゲーム。プレステーション(PS)4の販売は2000万台と13%増え、
発売から2年以上たち「収穫期に入りつつある」(吉田副社長)。
スマートフォンなど手掛けるモバイル事業も貢献。
・会社がわかる 特集東京センチュリーリース <8439> [終値3750円]太陽光発電や航空事業に出資。
従来型リース業からの脱却進める。
機器や資金の貸し手としてのリース業から、自らリスクを取って事業主体になるモデルへの進化。
国内市場の先細り懸念が背景、金融の知見生かして収益性高い事業に軸足移す。
10月には社名から「リース」外して名実ともに総合金融会社に脱皮。新たな事業モデルに磨きかける。
・日本株相場の膠着感が強まっている。消費増税延期といった材料にも市場は反応薄。
日経平均株価は1万7000円台回復できず。
ところが個別銘柄に目を移すと景色は変わる。
投資家による決算内容の精査が進み、一部銘柄は連日、年初来高値更新。
しばらくは「森を見るより木を見る」相場が続くかもしれない。
投資家が国内景気よりも「米国景気や利上げの行方を気にしている」。
日本企業の業績に重要なのは円相場。米利上げ観測の高まりで円安方向に触れ、海外時間の日本株を支える。
一方、国内時間帯は相場全体を押し上げる材料が乏しく、商いは膨らまない。
利益確定売りに押されやすくなり、海外時間の上昇分をほぼ帳消しにしてしまう。
今は森ではなく「木の精査」に徹して、優良銘柄の発掘に努めた方がよさそう。
・人民元の対ドル相場に注目が集まっている。
中国人民銀行(中央銀行)25日公表基準値(中間値)1ドル6.5693元と2011年3月以来、5年2カ月ぶりの安値水準。
米国の追加利上げ観測背景にしたドル高反映したため。
中国経済の先行きには不透明感が漂っている。米利上げきっかけに、再び元安傾向に拍車がかかるとも限らない。
当局が元安を防止するため大規模な為替介入に乗り出せば、
足元は2カ月連続で増加に転じた外貨準備高の減少問題が再燃しかねない。
・OUT Look:今週の株式相場、日経平均株価は1万7000円を試す展開か。
英国の欧州連合(EU)離脱リスクの低下など受け、投資家心理はやや強気に傾いている。
通常国会の会期末に消費増税の延期と財政政策が出れば、日経平均は上昇するとの見方がある。
ただ、石油輸出機構(OPEC)総会や米経済指標発表きっかけとした原油相場やドル円相場の動向次第では、
値動きが荒くなりそう。
最大の注目点は通常国会会期末に当たる6/1に、消費増税の延期と財政政策が打ち出されるかどうか。
これまで政策期待が下値を支えてきただけに、期待外れ終われば売り込まれるリスクがある。
1日の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数や3日の米雇用統計など、米国の主要統計も注目。
日経平均の1万7000円台は過去に売買が膨らんでいた水準で、戻り待ちの売りも出やすい。
・Wall Street:今週の米国市場は経済統計の公表が相次ぐ。
6/14〜15日開催米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げペースを占う上で経済指標への注目度は高い。
中でも6/3公表雇用統計は最も重要。5月の米雇用統計では非農業部門の雇用者数の増加は約16万人との見通し。
20万人下回るのは、米通信大手のストライキが影響と。
雇用統計で一段と注目度が高いのは賃金動向。市場予想では前月比0.2%増が見込まれている。
イエレン議長は27日、次の利上げについて「今後数カ月以内が適切」と発言。
強い雇用統計が出ると6月FOMCでの利上げが意識され、相場の波乱要因にもなりそう。
・ランキング:今期収益が伸びるが、割安な銘柄ランキング
時価総額100億円以上、PBR(株価純資産倍率)1.16倍以下(東証1部市場平均)。
1位スカパーJSAT <9412> [終値525円]17年3月期の増収率見通し36.0% PBR0.79倍
2位近鉄エクス <9375> [終値1402円]27.1% 0.80倍
3位ユニバーサル <6425> [終値2280円]19.9% 0.73倍
4位ハウス食品 <2810> [終値2206円]19.5% 0.9倍 壱番屋・ギャバン買収。
12位青山商事 <8219> [終値3970円]8.6% 0.90倍 既存店増収、女性向けも強化。
14位カネカ <4118> [終値858円]8.1% 0.97倍 電子材料の需要拡大。
24位フジ・メディアHD <4676> [終値1334円]4.7% 0.48倍 不動産・DVD販売伸びる。
・世界市場往来:先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち22指数が上昇。
上位1位インド週間騰落率5.34% 2位台湾4.09% 3位ドイツ3.73% 4位フランス3.69% 12位米国2.13%
下位25位ブラジル▲1.35% 24位ベトナム▲1.09% 23位中国▲0.16% 22位マレーシア0.52% 21位日本0.59%
・伊勢志摩サミット閉幕。G7「協調」演出、懸念先送り。各国の立場の違い印象付け。
財政出動巡り温度差、描けぬ成長、緩和効果も薄れる。
日本の財政出動の規模は約10兆円。消費増税の延期と合わせれば目先の国内景気を刺激できる可能性は高いが、
「日本だけの財政出動ではインパクトは弱く、効果は限定的」と市場は冷ややかに受け止める。
移ろう世界経済の軸。G20から再びG7に、役割重く。
英のEU離脱問題・テロ対策・難民問題・・・
苦悩の欧州、政治課題山積み。現実を見れば「玉虫色の合意」にならざるを得ない。
・特集、地銀・第二地銀、決算ランキング
最高益に潜むマイナス金利の影。
実質業務純益の増減率 6割が収益力低下。
上位行:1位北陸銀 <8325> [終値184円]37.95% 2位紀陽銀行 <8370> [終値1419円]26.09%
3位佐賀銀行 <8395> [終値236円]20.97% 4位フィデアHD <8713> [終値154円]19.93%
下位行:福島銀行 <8562> [終値87円]▲78.34% 2位島根銀行 <7150> [終値1242円]▲45.28%
3位福井銀行 <8362> [終値210円]▲43.10% 4位富山第一銀行 <7184> [終値518円]▲40.19%
自己資本利益率(ROE)10%超、4行にとどまる。
上位行:1位九州FG <7180> [終値558円]18.23% 2位スルガ銀行 <8358> [終値2375円]12.44%
3位宮崎太陽銀行 <8560> [終値177円]10.81% 4位琉球銀行 <8399> [終値1177円]10.16%
下位:1位愛知銀行 <8517> [終値4860円]2.31% 2位佐賀銀行 <8395> [終値236円]2.82%
3位名古屋銀行 <8522> [終値354円]3.02% 4位富山銀行 <8365> [終値3645円]3.06%
貸出金残高の増減率 再生エネ・不動産に商機。
上位:1位東邦銀行 <8346> [終値355円]9.91% 2位中国銀行 <8382> [終値1235円]8.25%
3位山形銀行 <8344> [終値409円]7.71% 4位トマト銀行 <8542> [終値146円]7.08%
下位:1位東北銀行 <8349> [終値146円]▲2.56% 2位長野銀行 <8521> [終値196円]▲1.59%
3位北国銀行 <8363> [終値313円]▲1.17% 4位北日本銀行 <8551> [終値2564円]▲0.53%
総預金残高の増加率 高金利行に集中
上位:宮崎銀行 <8393> [終値284円]5.97% 2位西日本シティ銀行 <8327> [終値204円]5.85%
3位大垣共立銀行 <8361> [終値316円]5.16% 4位常陽銀行 <8333> [終値397円]5.14%
下位:清水銀行 <8364> [終値2505円]▲7.72% 2位長野銀行 <8521> [終値196円]▲1.51%
3位ほくほくFG <8377> [終値130円]▲1.40% 4位四国銀行 <8387> [終値208円]▲1.22%
(日経ヴェリタス)
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