
扉を開いて(企業収益 黄信号)
- 2016年02月21日
- 株式投資・経済ニュース全般
2016年2月21日(日)はれ
・企業収益、黄信号。揺らぐ増益シナリオ、日本株の耐性は。
パナソニック <6752> [終値852.4円]「為替は2015年10-12月期から利益の押し下げ要因に転じた」
16年3月期連結税比企前利益従来の3000億円から2800億円に下方修正。半分は為替要因。
アルプス電気 <6770> [終値1838円]16年3月期経常利益下方修正。スマートフォン(スマホ)の減速が響く。
アップルのiPhone不振で、業績予想の見直しを余儀なくされた。
神戸鋼 <5406> [終値88円]16年3月期連結最終損益、200億円の黒字予想を一転、200億円の赤字に下方修正。
「中国の建機事業はどんどん環境が悪くなっている」。
ブリヂストン <5108> [終値3921円]16年12月期連結経常利益が7年ぶりの減益に。
円安が増益基調の支えだったが、円急伸踏まえ想定レート前期から6円円高の115円に変えた。
15年末1万9000円超えていた日経平均株価は年明け以降、一時1万5000円割った。
円相場も11日には1年3か月ぶりの高値となる1ドル110円台を付けた。
企業の16年3月期の経常利益見通しは期初計画こそ前期比伸び率8%台だったが、2月時点では2%台に急ブレーキ。
メリルリンチ、日本株を扱う各国のファンドマネージャー対象にした2月時点調査、
日本企業のEPS(1株利益)について「悪化する」との回答が「改善する」を大きく上回り、
08年リーマン・ショック以来の水準に高まった。
「EPS上昇で日経平均が2万円半ばまで上がる」との声すらあった15年末とは状況は一変。
16年3月期の業績見通し下方修正した要因は、「円高に伴う海外での収益の目減り」
「資源安による権益を持つ鉱山や油田などの採算の悪化」「中国はじめとする外需減速」の3つに大別できる。
・企業収益、黄信号。逆風のインパクト再点検。
為替:想定超える円高、レート修正相次ぐ。
為替変動が下方修正につながった主な企業
パナソニック <6752> [終値852.4円]今期経常利益2800億円(前期比53.5%増)下方修正額200億円
主な要因:新興国通貨安が営業利益を110億円押し下げ。
デンソー <6902> [終値4151円]3700億円(0.5%減)130億円 16年1-3月期想定1ドル120円から115円に。
川崎重工 <7013> [終値192円]890億円(5.5%増)110億円 16年1-3月期想定1ドル120円から117円に。
富士石油 <5017> [終値280円]▲67億円(赤字縮小)108億円 16年1-3月期想定1ドル122.5円から120円に。
NTN <6472> [終値367円]380億円(2.2%減)70億円 南米子会社で通貨安による為替差損が発生。
オムロン <6645> [終値3130円]655億円(25.0%減)55億円 16年1-3月期想定1ドル120円から117円に。
安川電 <6506> [終値1264円]355億円(4.8%増)15億円 第4四半期の想定を1ドル120円から115円。
日立建機 <6305> [終値315円]195億円(66.9%減)15億円 南アフリカランド、中国人民元など下落で為替差損計上
古河機械金属 <5715> [終値162円]60億円(9.1%減)15億円 16年1-3月期想定1ドル120円から118円に。
為替変動の影響が大きい主な12月期決算企業
ブリヂストン <5108> [終値3921円]1円円高に振れた場合の営業利益への年間影響額 ▲32億円
2016年12月想定レート115円
JT <2914> [終値4482円]▲27億円 118円 クボタ <6326> [終値1445.5円]▲18億円 115円
ヤマハ発 <7272> [終値1821円]▲14億円 117円 東洋ゴム <5105> [終値1704円]▲6億円 115円
マブチモーター <6592> [終値4615円]▲2.6億円 118円 クラレ <3405> [終値1226円]▲2.2億円 120円
・企業収益、黄信号。逆風のインパクト再点検。
資源:商社や石油関連、減損迫られ苦戦。
資源安が下方修正に結びついた主な企業
JX <5020> [終値447.0円]今期経常利益▲550億円(赤字縮小) 従来予想からの下方修正額 2050億円
主な理由 原油安で在庫評価が悪化、銅の下落も逆風。
住友商事 <8053> [終値1133.5円]1750億円(黒字転換)1200億円 鋼管や資源事業が苦戦
住友鉱山 <5713> [終値1129.5円]▲40億円(赤字転落)890億円 金属価格が大幅下落、海外鉱山の減損損失
国際帝石 <1605> [終値866..6円]3750億円(34.8%減)590億円 原油や天然ガスの下落が打撃に。
コスモHD <5021> [終値1199円]▲550295億円(赤字縮小)555億円 原油安で在庫評価が大幅に悪化
三菱マテリアル <5711> [終値308円]730億円(10.0減)150億円 銅価格下落などで海外鉱山からの受取配当金が減少
UACJ <5741> [終値211円]80億円(62.5%減)50億円 アルミ地金の下落で棚卸評価が悪化
・企業収益、黄信号。逆風のインパクト再点検。
外需:スマホ部品変調 インフラ関連失速
新興国減速・スマホ変調が逆風で下方修正した企業
日立 <6501> [終値475.0円]今期経常利益 5200億円(前期比0.2%増)従来予想からの下方修正額 800億円
主な理由:新興国でプラント設備や建機が減速
新日鉄住金 <5401> [終値1930.0円]2000億円(55.7%減)500億円 アジアの鋼材市況の悪化が逆風
JFEHD <5411> [終値1372.0円]650億円(71.9%減)350億円 鋼材の供給過剰が続き採算が悪化
神戸鋼 <5406> [終値88円]250億円(75.4%減)300億円 新興国で油圧ショベルの販売が減少
日本郵船 <9101> [終値209円]660億円(21.4%減)140億円 船舶の運賃市況の低迷で採算悪化
NOK <7240> [終値1882円]580億円(28.2%減)120億円 スマホ向け基板の受注落ち込む
日東電工 <6988> [終値5945円]1100億円(3.8%増)100億円 アップル減産でスマホ部材販売が減速
ファナック <6954> [終値16700円]2269億円(27.3%減)94億円 中国の工業生産減速で工作機械が不振。
・企業収益、黄信号。日本株買い 推進力に陰り PER急低下、市場の期待しぼむ。
2015年末日経ヴェリタスが株式ストラジストらに実施したアンケートでは
「16年の日経平均株価の高値は2万円台」との回答が多かった。
年明け以降の急変で、投資家からは慎重な声が出始めている。
株価を1株利益(EPS)で割って算出するPERは、
市場が企業の利益成長をどの程度見込んでいるのかを示す指標とも言える。
日経平均株価のPERはアベノミクス相場の始まった12年11月以降上昇続け、一時は19倍台まで高まった。
日米欧で比較すると、日本のPERは米国や欧州を大きく上回っていた。
背景は持続的な円安期待と、日本企業の利益拡大見通し。
年明け以降、日本のPERは急落し、企業業績の伸びに対する期待がしぼんでいる。
現状は2月中旬時点で13倍台で米欧より低く、アベノミクスが始まった12年11月の水準に戻った。
12倍台まで下がれば、11年3月の東日本大震災直後の水準に並ぶ。
10倍割り込んだリーマンショック直後ほどではないが、投資家心理の冷え込みは顕著。
リーマンショックや2014年の消費増税時にもPERが先に下がり、遅れて予想EPSが下がる動きがあった。
・企業収益、黄信号。来期下振れ、鉄鋼や非鉄で一段と。
過大なのれん代も潜在リスク。
アナリストは来期の経常利益予想を下振れさせている。
鉄鋼 16年3月期▲47.0% 17年3月期26.8%(期初比増減率▲44.8%)
非鉄金属製品 ▲25.3% 33.8%(▲19.5%)
商社 ▲7.6% 9.0%(▲16.2%)
電気機器 ▲0.3% 24.5%(▲15.3%)
証券 ▲17.0% 13.8%(▲12.3%)
機械 ▲0.2% 10.6%(▲9.7%)
自動車 10.6% 5.2%(▲6.3%)
医薬品 108.4% 8.0%(11.1)
電力 248.0% ▲32.1%(13.3)
M&Aに積極的な企業には減損リスクが高い(自己資本に対する「のれん代」の比率が高い主な銘柄)
そーせい <4565> [終14050円]自己資本のれん代比率1.1倍 のれん328億円
サントリーBF <2587> [終値4740円]77.8% 4542億円
近鉄エクスプレス <9375> [終値1489円]61.7% 764億円
電通 <4324> [終値5510円]61.5% 6568億円
JT <2914> [終値4482円]58.3% 1兆4292億円
楽天 <4755> [終値1008.0円]55.8% 3694億円
ソフトバンク <9984> [終値5088円]53.7% 1兆5706億円
キリンHD <2502> [終値3360.0円]40.6% 2692億円
・企業収益、黄信号。それでも元気、逆風下の成長企業は。最高益・ROE改善に注目。
17年3月期、久しぶりに経常最高益更新しそうな主な銘柄
カプコン <9697> [終値2373円]24年ぶり TDK <6762> [終値5740円]20年ぶり
富士フイルム <4901> [終値4276円]16年ぶり 小野薬 <4528> [終値19255円]12年ぶり
日産自 <7201> [終値965.5円]12年ぶり ヤマトHD <9064> [終値2343.5円]11年ぶり
NTN <6472> [終値367円 9年ぶり スタンレー電気 <6923> [終値2510円]9年ぶり
オリンパス <7733> [終値4095円]9年ぶり 日本ゼオン <4205> [終値713円]9年ぶり
自己資本利益率(ROE)の改善が見込まれる主な銘柄
スタートトゥデイ <3092> [終値3355円]17年3月期予想 73.1(16年3月からの改善幅17.1ポイント)
スクエニHD <9684> [終値2809円]13.9(2.7) オリンパス <7733> [終値4095円]17.3(2.1)
TDK <6762> [終値5740円]10.7(1.9) ケーズHD <8282> [終値3500円]11.0(1.9)
カプコン <9697> [終値2373円]12.6(1.8) テンプHD <2181> [終値1505円]17.4(1.6)
カルビー <2229> [終値4495円]15.6(1.6) 日本空港ビル <9706> [終値4090円]10.0(1.5)
・先週の東京株式市場では、日経平均株価が大幅上昇と下落を繰り返す「猫の目」相場。
週初の15日には1069円高と5か月ぶりの上昇幅記録。200円超す下げ幅も2日。
外国為替相場も落ち着かない中、
国内の機関投資家や個人投資家が様子見姿勢強め、短期取引の海外勢が売買の中心占めたことも乱高下の一因と。
日経平均株価は週間では1014円上昇。
欧州金融機関の信用不安和らぎ、サウジアラビアとロシアなどが他の主な産油国の同調条件に原油増産凍結で合意、
原油価格の底割れ懸念が後退したことも支えた。
市場の不安心理映し、16日に1ドル115円近くまで下落した円相場は足元で112円台へと再び上昇。
「今期の業績予想を一段と下方修正する企業が増えるリスクがある」との指摘も。
買い材料不在の中、市場参加者は投資テーマ探しに躍起。
日銀 <8301> [終値41500円]導入した「マイナス金利政策」の恩恵受ける銘型選びも始まっている。
・原油生産量で世界2位サウジアラビアと3位ロシアが16日、増産の凍結で合意。
石油輸出機構(OPEC)の盟主であるサウジと、OPEC非加盟で独自路線のロシアが手を組むのは異例の事態。
OPEC内の「増産派」であるイランもこの動きをひとまず支持、原油相場の強材料となった。
実際に需給の改善につながるかは不透明で、原油相場はまだ波乱含み。
産油国の攻防はまだ終わらない。
・発掘実力企業:ニッチで稼ぐ(6)ロゼッタ <6182> [終値1201円]自動翻訳ソフトの定額利用サービス提供。
翻訳の制度は年々向上、顧客も年2〜3割のペースで増えている。
同社は医薬品や化学、電機などあらゆる専門分野に対応できる点に強み。
国内の翻訳サービス市場は年間2500億円規模。自動翻訳はまだ1%未満。
プロの翻訳者からの乗り換え需要喚起できるように性能高めることが急務。
・会社がわかる 特集近鉄エクスプレス <9375> [終値1489円]「総合物流」への脱皮急いでいる。
カギは昨年5月に約1500億円投じたシンガポール物流会社APLロジスティックス(APLL)の買収。
米国企業との取引に強みを持つ会社をグループに取り込むことで近鉄EXの事業構成は大きく変わる。
空から海・陸まで一貫して手掛ける体制へと進化してサービスの付加価値高め、次の成長へとつなげる構え。
市場の評価が好転するには、やはりAPLL買収の相乗効果が目に見える形で出てくることが必要。
・日経平均株価が方向感失う展開となり、様子見姿勢の投資家も増えている。
買い材料が乏しくなる中、東京株式市場では、
16日から始まった日銀 <8301> [終値41500円]のマイナス金利政策の恩恵受ける銘柄を物色する動きが目立ち始めた。 商社や不動産といった、自己資本に比べ負債が多い銘柄への資金流入が鮮明。
先週の株価騰落率、日経平均株価は6.8%、日本郵政 <6178> [終値1394円]財務レバレッジ21.7倍 株価騰落率12.1%
ソフトバンク <9984> [終値5088円]7.3倍 22.2% イオン <8267> [終値1402.5円]7.0倍 ▲2.6%
丸紅 <8002> [終値587.0円]5.1倍 18.2% 住友不 <8830> [終値3071.0円]5.1倍 14.8%
オリックス <8591> [終値1405.5円]4.9倍 11.3% 日立 <6501> [終値475.0円]4.3倍 10.2%
一方、マイナス金利による収益圧迫の懸念から銀行株は総じて上値が重い。
「市場心理を映す銀行株が本格反発しない限り、相場の上値は重い」(米系証券)との声も。
・OUT Look:今週の日経平均株価は、1万6000円挟んで一進一退か。
26〜27日に中国で開かれる20カ国・地域(G20)財務相。中央銀行総裁会議で
何らかの国際協調が打ち出されるとの期待感が相場を支え、一方的に売り込まれる展開は考えにくい。
半面、積極的な買い材料も見当たらず、引き続き方向感が出づらい相場に。
国内機関投資家は3月末の決算控え、ポジション積み上げにくい。
個人も急激な下げ相場で買い余力は細った。
相場の将来の変動率示す日経平均ボラティリティー・インデックスは19日終値で36.96と、
警戒ラインの30を上回ったまま。
買い手が限られる中では、1万7000円台への回復も難しい。
外国為替市場で「ドルの先高観が後退してうる」ことも日本株には上値抑える要因。
週半ばには米住宅販売など米国経済指標が発表。数字が弱いと米利上げ観測が一段と後退、
円高・ドル安通じて、日本株の一段安につながるリスクも。
・Wall Street:今週の米株式相場は神経質な展開に。
前週末に1バレル30ドルの心理的節目を再び割り込んだ原油安は、引き続き投資家心理悪化させ株式相場の重荷になる。
一方、週末には中国・上海で20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。
市場安定に向けた協調に対する期待感は相場を下支えしそう。
今週25日発表、1月の耐久財受注は12月まで2か月連続で前月下回り、落ち込み目立つ。
同指標は米国での設備投資の先行き映すとされている。1月も悪化すれば米経済の今後に対する懸念強まると。
26日には10-12月期国内総生産(GDP)改定値発表、思惑で相場が動く場面も。
・ランキング:営業利益進捗率が高い銘柄ランキング(金融。・電力除く東証1部、時価総額500億円以上3月決算企業)
1位タカラトミー <7867> [終値789円]営業利益進捗率217.2% 定番玩具伸び、進捗率2倍。
2位丸大食品 <2288> [終値419円]141.4% 3位武田薬品 <4502> [終値5301円]139.6%
22位鹿島 <1812> [終値643円]104.0% 建築部門の工事採算が改善
23位江崎グリコ <2206> [終値5650円]102.2% 注力の菓子関連が好調
32位セイコーHD <8050> [終値429円]97.4% 日本人向け高価格帯が堅調
・世界市場往来:先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち24指数が上昇。
上位1位日本週間騰落率6.8%(15年末比騰落率▲16.1%)2位ギリシャ5.8%(▲23.9%)3位フランス5.7%(▲8.9%)
4位ノルウェー5.5%(▲8.7%)5位香港5.3%(▲12.0%)
下位25位インドネシア▲0.4%(2.3%)24位南アフリカ0.8%(▲5.1%)23位ベトナム1.7%(▲4.3%)
22位フィリピン2.1%(▲2.3%)21位米国2.6%(▲5.9%)
2015年末比騰落率 1位タイ2.5% 2位インドネシア2.3% 3位トルコ1.8% 4位アルゼンチン1.3%
5位台湾▲0.2% 6位カナダ▲1.5%
最下位ギリシャ▲23.9% 24位上海▲19.2% 23位日本▲16.1% 22位スペイン▲14.1%
21位ドイツ▲12.6% 20位香港▲12.0%
・世界の震源。人民元危機はあるか。
年明けから世界市場揺さぶる震源となった人民元は、なお警戒モードが続く。
シナリオ1.急落:ヘッジファンドの空売り焦点。
確率は高くはないが、外貨準備額の減少に歯止めがかからなければ、元安が元安を呼ぶ可能性もありそう。
シナリオ2.緩やかに下落:当局が制御、目安は1ドル=7元前後。
リーマンショック後、中国は1年半にわたって人民元相場を据え置いた。
人民元が再び動き出すタイミングはかる目安になりそう。
シナリオ3.安定:巨額の経常黒字、元相場を下支え。
需要が増えるため、為替相場にとって元高・ドル安要因になる。
中国人民銀行(中央銀行)など当局が、元安は続かないとみている理由の一つ。
足元では為替介入の効果もあり、実際に人民元高・ドル安に振れ始めててもいる。ひとまずは当局の望む動きにある。
(日経ヴェリタス)
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